大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和25年(う)698号 判決 1950年11月30日

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

判決要旨

数罪を構成する公訴事実を起訴する場合の訴因としては一の行為を他の行為から区別し得る程度に特定し少くとも各個の行為が如何なる法令の適用を受けるかが判明する程度に明かにすることを要する、この程度に訴因を明かにしない公訴の提起は不適法である。この不適法は訴因の追加変更又は訂正の方法により補正追完しうる。

理由

本件起訴状の公訴事実を見るに被告人は公に認められた場合でないのに、昭和二四年一〇月中旬頃より昭和二五年一月初旬頃までの間に九回に亘り八戸市塩町の自宅において大内田幸一外氏名不詳の米兵より連合国占領軍財産である煙草十個入八一本を代金一本九百円ないし千円の割で買受けて収受しと記載されてあり右に九回に亘る犯行についてはその始期と終期が分るだけで各個の行為の内容が具体的に明示されていない。刑事訴訟法第二五六条は公訴事実は訴因を明示して之を記載しなければならない。訴因を明示するにはできる限り日時場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定して之をしなければならない、と定めているのであつて数罪を構成する公訴事実を起訴する場合の訴因としては一の行為を他の行為から区別し得る程度に特定し以て少くとも各個の行為が如何なる法令の適用を受けるかが判明する程度に明にすることを要するものでこのような程度に訴因を明かにしない公訴の提起は不適法と謂わなければならない。尤もこの不適法は訴因の追加変更又は訂正の方法により特定せしめることなくしては審理判決することが出来ないものと謂わなければならない。蓋し然らざれば公訴事実についての事実点及び法律点に関する被告人の防御権の十分な行使は之を望み得ず裁判所としても如何なる範囲で審理判決をなすべきかを決定しえない筋合で更に又判決をしてもそれが訴因の範囲内でなされたものであるか否か判決事実と起訴状記載の犯罪事実と対照するに由ないからである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例